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スペシャリストが明かす 経理アウトソーシングのコツ5 明朗会計で信頼感を

税理士新聞 2000年6月25日号

経理や給与計算のアウトソーシングは、労働集約的で、処理量がコスト面にストレートに跳ね返る仕事といえる。そのため、契約を結ぶ前に作業量を見積もって、適正な料金を算出しなければならない。しかし、難しいのがこの「適正」な価格である。

まず、その理由として、人によって原価の考え方が違うことが挙げられる。経理アウトソーシングの業界構造として、若手の税理士と創業間もないベンチャー企業やSOHO(スモールオフィス・ホームオフィス)が低料金で契約をした場合、その会社の成長に従って処理量が増えていき、顧問料も増額されて会計事務所も成長していくという流れがある。経理や給与計算などの処理業務が継続的なサービスであるため、安値であっても一度契約を獲得すれば後々で利益を向上させていくことが可能である。

また、処理を行う税理士自身が営業すれば、その場の流れを察知したうえで契約に結びつくような価格決定をすることができる。さらに、クライアントが自身で処理業務を行ったことがない場合、その手間や料金の相場がよく分かっていないこと、そうした流れのなかで料金の決定プロセスが不透明となっていることなど、報酬面については、この業界特有の曖昧さがそのまま反映されている。しかし、会計事務所においても、人員を雇って処理を行うようなレベルまで成長すると、安値での受注が難しくなってくる。あまり値段を下げてしまうと原価割れを起こすからだ。税理士自身だけで処理を行っている頃には原価や利益率よりも顧問料の絶対額のほうがよほど重要であったわけだが、人を雇って処理する状態では、原価割れになるぐらいなら契約をしない方がよいということになってしまう。このため、ある程度の規模に達した会計事務所では、あえて新規契約を行わないところもある。

アウトソーシング会社は、最初から人を雇って処理を行う形態を取っている場合が多く、最初の商談時から原価というものが厳格に存在している。税理士の価格提示と違い、作業量を見積もってから書面で見積もりを提出するのが常であるため、税理士の価格提示とはまったく方法が違う。

この方式の強みは、明確な料金表があるという点である。価格決定プロセスが透明なため、処理量や処理の種類が増減したときの料金が容易に算出できる。これにより顧客に安心感を与えることで、違ったタイプの顧客層を開拓していけるわけだ。

また、料金表の作り方にも同様の考え方を反映しており、処理原価に営業コスト、管理コストなどを加味したうえで、処理量の段階ごとにリーズナブルな値段を出すよう工夫している。

会社を経営していると、思わぬ気のゆるみや突然のアクシデントなどで足をすくわれることもある。しかし、その結果をクライアントに転嫁しては本末転倒だ。大切な会社の経理を任せてくださいというからには、信頼されることがもっとも重要なわけである。このために、クライアントから受け取っている料金とサービスの質のバランスを常に一定以上に保っていくための企業努力は必要不可欠だ。

ただ、自分の尺度だけでその努力に満足感を感じているだけでは意味がない。自分自身が努力するだけでなく、クライアントに常に見られているという緊張感で自分や会社全体を律していくことで、その努力の質的・量的持続性は格段に高まるもの。

こういった透明な基準を設けて、自社のサービスのコストパフォーマンスをクライアント自身に量ってもらい、さらに判断してもらうことで、はじめてクライアントの満足いくサービスを提供できると考えている。

(株)バックオフィス 取締役副社長・小杉 和久
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