税理士新聞 2000年4月25日号
しかし、これを効率化してコストを下げていかないと、スケールメリットだけではアウトソーシングビジネスの収入を上げるのは難しい。そのため、要求事項とコストの妥協点を見つけだすという過程は、アウトソーシングの営業活動にとって欠かせないものとなる。
そもそも経理業務自体が、会社によって処理形態が違う、遠隔で業務を行うための障壁が多い、といったことから、大規模処理に適さない種類の業務といえた。依頼者のいうことを全部聞いていては、この「常識」は覆せないだろう。
サービスのコストパフォーマンスを高めるためには業務の標準化が必要であり、そのために、時には依頼者がいままで行っていた業務の流れを変えなければならないときもある。日本という国は、「お客様は神様です」という文化からか、サービスのクオリティーが非常に高く、依頼者もそれに慣れているため、低料金のサービスを行っていくことはなかなか難しい。低料金イコール低品質という先入観がどうしてもついて回るからである。これを打ち破るためには、当然ながら低料金でできる理由を依頼者にきちんと説明する必要がある。
普通、この説明には様々な壁があり 初めて会う相手にきちんと理解してもらえるケースの方が少ない。たとえば、低料金となる理由が新しい仕組みを作ったためだとすると、その仕組みの説明から行わなければならない。そもそも、会計に関する詳しい知識をもたない相手に、こうしたことをきちんと理解させるのは非常に難しい。
しかし、会計業務のアウトソーシングの場合、単純労働のアウトソーシングと違い、アウトソーシングの依頼者と受託者の関係として、受託者の方が遙かに知識・経験を蓄積している。このため、契約を結ぶまでのやりとりの中で、受託者が主導権を持って話を進めることができる。
受託者が主導権を持っていれば、業務の流れや成果などについて、それが低価格化に不可欠で、なおかつ、合理的なソリューションであることを顧客に提示できる。
弊社の場合、各種の広報・宣伝活動を通じて認知度を高め、問い合わせなどを通じて得たデータから、関心のある依頼者候補をリストアップし、こうした人たちを相手に説明会を開いている。暗い部屋の中で、ライトアップされたプレゼンテーターが説明するという方法は、内容を理解してもらう際には非常に効果が高い。
依頼者の事務所に訪問した場合と違い、電話、来客などによる中断がないため、高い集中力をもって内容を聞いてもらうことができる。その後、会場に散らばった営業担当者が、参加者と個別の質疑応答や商談にはいる。
単価の低い中小企業相手のアウトソーシング事業にとって、営業コストというのはひとつの壁であるが、このように集中型で進めることで、効率的な営業が実現できるわけだ。
(つづく)
(株)バックオフィス 取締役副社長・小杉 和久