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スペシャリストが明かす 経理アウトソーシングのコツ2 社員からのSOSを逃さない

税理士新聞 2000年5月5日号

アウトソーシング業という業態で利益を出そうとする場合、どうしても個別の業務は定型化せざるを得ない。業務の効率化を進めて低料金を実現すれば、クライアントは喜んでくれる。

しかし、そもそもアウトソーシングの業務自体は、流れに乗ってしまえば後は進めていくだけの、いわゆるルーチンワークであり、スキル面でもマニュアル化できる程度のものしかない。それだけに、作業は単純化し、従業員が高度な技能を発揮する場はあまりなくなってしまう。

会計事務所と違い、税理士の資格取得を目指す職員や、資格を取って間もない若手の税理士を抱えているわけではないので、正直言って従業員に「下積み」のガマンを求めるわけにもいかない。

そうなってくると、従業員のモティベーションを保つのが難しくなってくる。弊社でも最近、業務処理部分の担当者に過重なストレスがたまって爆発してしまった。まだ仕事の優先順位付けができない従業員に、キャパシティーを超える分量の仕事を与えておきながら、そのフォローや交通整理をしなかったことが原因だった。幸い会社を辞めるような事態にはならなかったが、これを機会に業務処理の考え方を根本的に改めていこうと思っている。

彼女は、経理の業務処理という、業務の中でもルーチンワークの部分の担当者として雇用した。しかし、クライアントの中には、かなり特殊な方法で経理を行っている会社もある。

そのため、彼女の仕事の中には、専門的な判断を要する部分も多くなり、スキルや経験を持っていないと進めていくのは難しくなっていた。何より、作業として処理する部分の時間的な負荷が大きく、自分から進んで業務処理の流れを改善する余裕はなくなってしまった。

こうなると悪循環で、上手く時間を使って、業務の流れをスムーズに変えるための努力をしなさいといった指示をしても、それを考える時間が取れないため、意味のないアドバイスになってしまう。こうして、初めはヤル気に満ちた社員であっても、ハードそして、なおかつ単調な業務の中で、いつしか本人のモティベーションが落ちてしまう。これをそのまま放置しつづけると、会社を辞める典型的なパターンになる。

彼女のケースでは、一部の作業を周囲の社員に肩代わりしてもらって一時的に減らした。さらに、上司と相談し、いま抱えている仕事の優先順位をはっきりさせた。また、大きな仕事をいくつかのパートに細分化し、今日はどこまで進める、明日はどこまで終わらせるという具合に、近距離の目標を置いた。

そして、彼女のほうでも、仕事を進めるのに際して何かが必要な情報なのか、その情報を前工程の担当者からどうやって受け取るかといったことを考えながら、情報伝達シートを作ったりして、自らの仕事の仕方を設計していくことを覚えている。

だが、アウトソーシング事業は、会社中がパニックのように忙しくなることも多い。こうした際に、同僚の危機に気が付いても自分の仕事が忙しく、手をさしのべられないケースも出てくる。管理する側としては、社内コミュニケーションの充実を図り、社員ひとりひとりのモティベーションを保ち、高めていくことが事業伸張のための大きなポイントになる。
(つづく)
(株)バックオフィス 取締役副社長・小杉 和久
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