税理士新聞 2000年5月15日号
そうしたことから、アウトソーシングにおける経理処理という職種には、女性が従事することが多い。担当する顧客企業の数で仕事の量が調整できるので、結婚・出産などで一度家庭に入った女性がパートタイムで仕事に復帰するには好都合であるほか、単純作業の積み重ねということで、特別なスキル・ノウハウがいらないため、平均賃金も低く抑えられるわけだ。
アウトソーシング会社は、オフィスも質素で、一部の管理職以外は従業員の給与も低いという会社がほとんど。安価で良質な労働力を確保するという発想自体は間違いであるとは思わないが、これでは業務の効率化を進めていくにも限界があるのではないだろうか。
大規模な経理処理を行っている会計事務所の中には、社内で顧客の情報を共有する情報シートを作ることで、複数人数での処理を可能にし、処理時間の短縮を実現しているところがある。こういった手法を導入していかない限りは、すべての業務が人的資源のクオリティーのみに依存し、担当者が辞めたら提供できる品質が下がってしまうおそれがある。
業務のクオリティーを落とさずに処理の効率化を図るには、人手に頼った処理自体を見直す必要がある。そのためには、情報の記録、処理の自動化などの手法が非常に大切になる。
会計ソフトは、その意味では画期的なソリューションであったが、インターネットをはじめとするネットワークがこれだけ発達した社会では、このネットワークをさらにうまく活用することが重要になってくる。
インターネットなどで、顧客指導を行う「リモート会計」を展開している会計事務所なども出ているが、聞けばかなりの成果をあげているようである。
ちなみに、弊社ではインターネットを通じてクライアントから情報を取得し、90%以上の処理をコンピュータによって自動化することで、月額のサービス料金を1万円という水準まで落とすことに成功した。
自動化のカギは、クライアントからの情報をアナログな形でなく、デジタルな形で取るということである。たとえば、基本的なことであるが、Yes/Noは「はい」「いいえ」と書いてもらうのではなく、選択肢にマルをつけてもらうことが必要だ。
そうでないと、コンピュータはそれをうまく読み取ることができない。選択肢になる項目が増えていけば、クライアントの負担も減らすことができる。
弊社に面接にくる転職希望者の中には、「1時間で何百の仕訳の入力ができます」ということを履歴書に書いてくる人もいる。
こういう人たちを、会計事務所ならば、うまく使いこなすことができるであろうが、弊社ではうまく使いこなすことは難しい。どちらかというと、単純作業を短時間に多くこなせる人材よりも、こういった作業を極力自動化し、アナログな判断材料を要する部分を処理したり、全体の業務の流れを設計したりすることができる人材が必要になってくる。
逆に言えば、そういった人材を採用していない会社や事務所では、これまでの業務に対する考え方を根底から覆すようなことは不可能であろうし、そうなると、激化する競争を勝ち抜いていくことは難しい。
(つづく)
(株)バックオフィス 取締役副社長・小杉 和久