税理士新聞 2000年5月25日号
しかし、業務処理側からすれば、必要な情報をきちんと入手しないと正確な業務処理を行うことは不可能だ。摘要ひとつとっても、間違っていればクライアントに迷惑をかけるような結果を招いてしまうことがある。
かといって、不平を言ってばかりいても仕方がないので、クライアントの本来業務の邪魔にならずに、業務を円滑に処理する方法を考えなくてはならない。
では、クライアントがアウトソーシングの会社に求めていることは何か。丸投げのような形で記帳代行などを依頼するわけだから、細かい知識や判断を要することなしに、しかも時間的な負担も減らしたいということがまず重要となる。
それに対して、業務処理側、つまりアウトソーシング会社にとって必要なのは、正確かつタイムリーな情報入手。これをどう上手くこなしていくかが、効率的な業務処理の鍵である。
この2つの矛盾する要求を満たすために、弊社では、弊社側からのクライアントへの接触時間・回数を最小限にすることを基本方針としている。記帳代行会社から、不明点があって一日に何回も電話がかかってくるというのは、クライアント側にとっては迷惑にもなりかねないので、いま持っている情報だけで仮の処理を行って、疑問点は別にまとめておくのである。これによって、クライアントは、まとまって出てきた疑問に一度答えさえすればよく、クライアントの負担を減らすことできる。 また、「この情報をこの状態で揃えてください」という分かりやすい依頼書やマニュアルのようなものをあらかじめ用意しておくのも効果的となる。こうした方法によって、処理を行う前に揃えておかなければならない情報の揃い具合がだいぶ変わってくる。
ただし、内容が細かすぎると、クライアントが理解できなかったり、逆に面倒がって読んでくれなかったりするわけで、この加減が非常に難しい。とくに伝票やソフトウェアなどを用意していると、その説明に終始しがちであるが、クライアントの目から見ると、どこに何を書くかの機能説明ではなく、どんなときにどれを使ったらよいのかという、いわゆる「逆引き」的な説明が必要になってくる。
そして最後に必要なのは、クライアントへの「指導」である。情報の揃い具合が悪いクライアントにはその揃え方を、あるいはそれより前の情報整理の仕方を指導する必要があるし、クライアントにも必要最低限の知識を持っていてもらわないと、資料の必要・不要の判断さえできないかもしれない。
クライアントはそもそもその判断ができないから丸投げしてしまうのであり、最初は「そんなことは関知したくない」と言って反発してくるクライアントもいるが、そういった「指導」をしていくことで、結果的にクライアントの手間を減らすことになり、業務効率が変わってくるだけでなく、クライアントからの信頼度も増していく。
大切なのは、「クライアントの目」からも、業務処理のフローを見直してみることである。
(つづく)
(株)バックオフィス 取締役副社長・小杉 和久