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スペシャリストが明かす 経理アウトソーシングのコツ6 コスト最小化の考え方

税理士新聞 2000年7月5日号

クライアントにアウトソーシングを勧めるとき、その理由として提示するものがいくつかある。たいていの場合、コスト削減であるが、これにはいくつかの側面がある。

ひとつ目は、業務フローの効率化である。

多くの場合、当該業務に熟練したスタッフが処理をするため、そうでない場合と比べて、時間当たりの人的生産性が高まる。クライアントが中小企業の場合、少ない人数の従業員が、なかなか慣れない業務を何種類もかかえている場合が多いため、専門性の高い業務では、とくに有効である。

また、同じスタッフが、同種の業務を集中して行うために、他の業務と兼任で行っている場合に比べ、集中力が高まって、時間当たりの生産性が高まるという利点もある。

二つ目は、人材の共有である。

設備と同様であるが、同種の業務を複数のクライアントから受託しているため、スタッフの経験・ノウハウの蓄積が速いスピードで進み、業務に対する熟練度が高い状態が維持される。

たとえば、ダイレクトメールの封入といった単純作業においても、業務のスピードを上げようという意識を持っていると、封筒や中身の配置、手の動かし方までを工夫することで時間当たりの生産性がぐんぐん高まっていく。これも専門性の高い業務で顕著に見られる。

三つ目は、設備の共有である。

製造などは顕著だが、高額の設備を必要とする業務の場合、ひとつの設備のコストを複数のクライアントからの業務委託料で賄う状態になるため、1社ですべて持つよりも効率的になる。

経理や給与計算の場合は、設備に当たるのはコンピュータシステムやソフトウェアなどである。

四つ目は、時間の共有である。

複数のクライアントの処理を同時に行う仕組みを作り上げ、同じ時間で数社の処理を一括して行うことができる。これは、同種の処理を一括で行える場合に有効である。たとえば、消耗品の購買などは、一括購買することで価格交渉などの手間を省き、クライアント1社当たりで計算すると、従来よりもはるかに短い時間で業務を行っていることになる。

五つ目は、コストを集中することで、より効率的な環境の構築が可能だということである。

処理を行う場所・時間帯などを変えられるので、ここを効率化することで、処理単価を落とすことができる。

たとえば、地価の低い地点に処理センターを持って、都心にオフィスがあるクライアントよりも家賃を低くしている会社や、在宅ワーカーを活用することで人件費の単価を下げている会社などもある。

さらに、複数のクライアントからの業務委託料で設備コストをシェアすることで、より効率的な処理が可能な、高額な設備を購入することもできる。

これによって、生産性をより高めることができる。こういった考え方を突き進めて考えると、アウトソーシングにはどのような業務が向いているのかが分かる。また、クライアントが現在持っているリソースと比較することで、自分がどんなリソースを用意すればコストを最小化できるが決まってくる。

これは、言い換えれば、クライアントに対してより大きなメリットを提供することを可能にしており、アウトソーシングサービスとしての価値を高めるための方法論である。

(株)バックオフィス 取締役副社長・小杉 和久
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